― 足りない栄養素と、健康的に続けるための考え方 ―

【目次】
1,はじめに:ヴィーガンという生き方の背景
2,野菜中心の食生活がもたらす栄養バランスの変化
3,① ビタミンD不足に注意
4,② 鉄分 ― 特に「ヘム鉄」の不足
5,③ タンパク質 ― 筋肉を守るために不可欠
6,④ 栄養は「バランス」 ― ヴィーガンを続ける上で大切な視点
7,最後に:健康的な選択は知ることから

はじめに:ヴィーガンという生き方の背景
「ヴィーガン(Vegan)」という言葉は、1944年にイギリスで誕生しました。
当時、ヴィーガン協会(The Vegan Society)が設立され、「動物由来の食品を一切口にしない完全菜食主義者」を指す言葉として広まりました。
つまり、肉や魚だけでなく、卵、乳製品、はちみつなども口にしないというスタイルです。
同じ“菜食主義”でも、卵を食べるオボ・ベジタリアンや乳製品を摂るラクト・ベジタリアンとは異なり、ヴィーガンはより徹底しています。
その背景には、動物愛護や環境保護の意識が強くあります。
「動物の犠牲の上に成り立つ食文化を変えたい」「地球に優しい選択をしたい」――
そんな理念に共感してヴィーガンになる人が多く、単なる食事法というよりは生き方・哲学に近い考え方です。
そのため、健康面だけを根拠に「良い」「悪い」と評価するのは適切ではありません。
ただし、人間の体は“完全菜食”を前提に設計されていないため、どの栄養素が不足しやすいかを理解しておくことはとても大切です。
野菜中心の食生活がもたらす栄養バランスの変化
一般的に、野菜はビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、健康的な印象があります。
確かに、ビタミンA・C・K、カリウム、マグネシウムなどは十分に摂取できます。
一方で、動物性食品をすべて排除することで欠けやすくなる栄養素も存在します。
特に注目すべきは以下の3つです。
🩸 ビタミンD
🩸 鉄(特にヘム鉄)
🩸 タンパク質
この3つは、いずれも健康維持に欠かせない要素であり、不足すると疲労感や骨・筋肉の衰えなどを引き起こす可能性があります。
① ビタミンD不足に注意
ビタミンDは、骨の健康を保つために非常に重要な栄養素です。
腸でのカルシウム吸収を助け、骨や歯を丈夫に保つ働きを持っています。
しかし、野菜にはほとんど含まれておらず、魚や卵といった動物性食品が主な供給源です。
そのため、ヴィーガンの方はビタミンD不足になりやすい傾向があります。
ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収効率が下がり、骨密度が低下しやすくなります。
これは特に高齢者や日光を浴びる機会が少ない人にとって、骨粗しょう症リスクの上昇につながります。
🌞対策方法
・日光浴:ビタミンDは皮膚で合成されるため、1日15分ほど日光を浴びるだけでも有効。
・きのこ類を活用:特に干し椎茸やキクラゲ、舞茸にはビタミンDが比較的多く含まれています。
・サプリメント:植物由来(ヴィーガン対応)のD2タイプサプリを利用するのも選択肢です。
【ビタミンDを多く含む食品例】
紅鮭/鯖/うなぎ/卵黄/椎茸/キクラゲ/舞茸
(※動物性食品を摂らない場合は、植物性サプリや日光浴で代替)

② 鉄分 ― 特に「ヘム鉄」の不足
鉄は、血液中の赤血球を構成するヘモグロビンの材料です。
酸素を全身に運ぶ役割を担っており、生命維持に欠かせません。
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
- ヘム鉄:肉や魚などに含まれ、吸収率が高い(約15〜25%)。
- 非ヘム鉄:植物性食品に含まれ、吸収率が低い(約2〜5%)。
ヴィーガンの場合、この非ヘム鉄しか摂れないため、吸収効率が大幅に下がります。
特に女性は月経により鉄を失いやすく、「鉄欠乏性貧血」になりやすい傾向があります。
氷を無性に食べたくなる“氷食症”、肌や髪の乾燥、集中力の低下などの症状が見られることも。
🥦対策方法
・鉄を多く含む食材(豆類、海藻、ほうれん草など)を意識的に摂取する。
・ビタミンCを同時に摂ることで非ヘム鉄の吸収率が上がる。
・吸収を妨げるコーヒーや紅茶のタンニンを食後すぐに摂らない。
・必要に応じてヘム鉄サプリ(動物性でないもの)を活用。
【鉄を多く含む植物性食品】
大豆/小松菜/ひじき/ほうれん草/海苔

③ タンパク質 ― 筋肉を守るために不可欠
タンパク質は筋肉、臓器、皮膚、髪、ホルモンなど、体を構成する最も基本的な栄養素です。
摂取量が不足すると、体は筋肉を分解してエネルギー源にしてしまうため、筋力低下や代謝の低下を招きます。
一般的に、タンパク質は肉・魚・卵・乳製品などに豊富に含まれます。
しかし、ヴィーガン食ではこれらを避けるため、意識的な工夫が必要です。
🥣 植物性タンパク質を摂るコツ
・大豆製品(豆腐、納豆、テンペ、ソイミートなど)を中心に。
・穀類と豆類を組み合わせる(例:ご飯+納豆、全粒パン+豆スープ)。
・ナッツや種子類(アーモンド、チアシード、ピーナッツバター)も有効。
【1日の目安】
体重×1〜1.5gのタンパク質を摂ることを目標に。
例:体重60kgなら60〜90gを目安。
不足が心配な場合は、**植物性プロテイン(ソイ・ピープロテイン)**の活用もおすすめです。

④ 栄養は「バランス」 ― ヴィーガンを続ける上で大切な視点
ヴィーガンという生き方は、倫理的にも環境的にも素晴らしい選択です。
しかし、体を作るのは理想だけでなく、日々の栄養の積み重ねです。
人間の身体は、もともと多様な栄養源を必要とするようにできています。
そのため、完全菜食を続ける場合には「どう補うか」という知識が欠かせません。
- 栄養補助食品やサプリを上手に取り入れる
- 定期的に血液検査を受け、鉄やビタミンDの値を確認する
- 健康状態に応じて、柔軟に食生活を調整する
これらの工夫をすることで、倫理と健康を両立したヴィーガンライフを実現できます。

最後に:健康的な選択は「知ること」から
ヴィーガンを実践する人の多くは、思いやりや信念を持ってその道を選んでいます。
その価値観は尊重されるべきものであり、否定されるものではありません。
ただし、どんなに崇高な理念でも、体が弱ってしまっては長く続けられません。
だからこそ、自分の体を守るための知識を持ち、足りない栄養を理解し、上手に補うことが大切です。
※本記事は栄養学や予防医学の一般的知見をもとにまとめた内容です。
個々の体質や健康状態によって最適な栄養バランスは異なります。
具体的な栄養管理やサプリメントの使用については、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。
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